堆積盆地構造をなす平野部や盆地では,周囲の岩盤地点に比べ振幅が大きく継続時間の長いやや長周期の地震動(>~2秒)が観測される.この「長周期地震動」は,相対的に地震波速度の遅い堆積層による地震波の増幅のみならず,盆地生成/転換表面波など盆地の3次元構造の影響を受けた複雑な波動伝播を反映していることが分かってきており,長周期地震動の定量的評価のためには盆地速度構造モデルの高度化が不可欠である.我々は,観測される長周期地震動を再現することを目的として,時刻歴としての地震波形を用いた3次元盆地速度構造モデルの高度化手法の開発を大阪堆積盆地において行っている.発表では,長周期地震動評価のための地下構造モデル化に関する既往研究と,地震波形インバージョンを始めた動機について簡単に紹介し,現在までの予備的な数値実験と実記録への適用例を紹介する.
地形・地質学的時間スケールで得られる地殻変動量は、地震・測地学的手法では得ることのできない長期間の累積的な地殻変動の結果である。本発表では、近年東北日本などで適応されてきた段丘面を利用した地殻変動量算出方法(TT法・FS法など)について紹介する。この手法では、10万年オーダーの地殻変動量を面的に得ることができ、従来データの少なかった内陸域での地殻変動量を議論することができる。そして、最後に発表者が現在研究中の内容について発表し、上記の手法が近畿地方でも有効である可能性を示す。
阿蘇火山は、今から約9万年に大規模火砕流噴火を起こし、現在の巨大カルデラ(18km×25km)を形成した。このような大規模噴火を起こす火山の地殻内にどのようにマグマや流体が存在するのかを明らかにすることは、大規模噴火の過程を考える上での大きな手がかりになる。我々は、遠地地震波形を用いたレシーバ関数とその遺伝的アルゴリズムインバージョンにより阿蘇カルデラ地殻深部のS波速度構造を得た。その結果、阿蘇カルデラの西部の約15km~21kmの深さにS 波速度が約2.3 km/s の低速度層を見出した。また、この低速度 層は東部のカルデラ壁やカルデラの南部の地下には分布しないことがわかった。カルデラの東部では遠地地震データが得られていないので、速度構造は求まっていない。低速度層には、多くても10%程度の水またはメルトが含まれていると推定できる。速度構造が求まっていないカルデラ東部では、地殻深部に圧力源が推定され、低周波地震が観測されていることから、この領域の地震波速度構造を調べることが重要であると考え、新たな地震観測を開始する。
To the present, dislocation theories for a homogeneous half-space earth model are often used to interpret deformations caused by earthquakes or to invert seismic fault models. However, far-field effects of Earth's curvature and stratification must be considered. In this study, the half-space and spherical dislocation theories are used, respectively, to calculate coseismic displacements caused by the 2008 Wenchuan earthquake and the 2004 Sumatra earthquake. Effects of Earth's curvature and stratification are investigated through the discrepancies of results calculated using the two dislocation theories. Results show that the effects of Earth's curvature and stratification are very large, particularly for moderate dip angle events. Ignoring the effects will cause 50-200% errors in coseismic displacement for moderate dip angle events such as the 2008 Wenchuan earthquake. Furthermore, comparison with observations verifies that spherical dislocation theories yield better results than those of half-space ones in far fields.
長期における真の隆起量を求めるには,見かけの隆起量のみならず, 侵食等の削剥作用によって損なわれた量の評価が必要である.しかし,原位置からの物質の移動により直接的な証拠が失われてしまうため,削剥量・速度を定量的に扱うのは一般に困難であり,手段は限られている.本研究では,その限られた手法のひとつである熱年代学的手法を用いて,長野県木曽山脈の削剥速度を推定した.熱年代学とは,放射年代が熱によってリセットされる現象を利用して温度変化を伴う地質イベントの年代を求める学問領域であるが,地下深部の高温領域から上昇削剥によって地表まで移動してきた岩石にこれを適用することによって,削剥速度を推定することが可能である.熱年代を基に削剥速度を推定する手法は,数kmオーダーの削剥量を持つ大規模な造山帯が一般的な適用対象であり,日本のような島弧に分布する小規模な山地への適用例は多くはない.本発表では,国内最大の断層地塊山地である木曽山脈における研究例を紹介し,熱年代学的手法が日本のような島弧地域においても山地地域の地形発達史の解明に有効である可能性を示す.
地震を主とした断層運動の挙動をモデル化するためには,岩石の摩擦性質は重要な情報である.本セミナーでは,1900年代後半から半世紀にかけて行われてきた岩石摩擦の研究と,その先がけとなるトライボロジーの基礎的研究を,重要事項の説明を付けて簡単にレビューする.最後には,発表者が今年度の地球惑星科学連合大会で発表した,珪質岩石の摩擦特性と摩擦表面物質について紹介する.
重力観測衛星GRACEは2004年スマトラ-アンダマン地震に伴う重力変化を観測した。これは地震に伴う重力変化の衛星観測に成功した初めての例である。GRACEデータからは地震後のポストサイスミックな重力変化も検出されており、GRACEデータを用いた余効変動研究が現在行われている。本発表では、球対称成層地球でのDislocation理論をもとに、afterslipと粘弾性緩和の両方を考慮した余効変動モデルを提案する。GRACEの衛星重力データとGPSデータの両方から制約を与えることで、より現実的な余効変動モデルを構築することができる。
内容 ・重力観測衛星GRACEのイントロダクション ・球対称成層地球でのdislocation理論 ~ 曲率と成層構造が与える影響 ・GRACEデータから検出された2004年スマトラ地震に伴う重力変化 ・Afterslipのみを仮定した余効変動モデル ・粘弾性緩和とAfterslipの両方を仮定した余効変動モデル
断層の地震時破壊過程を力学的に支配するパラメタを観測波形から直接推 定する手法として,動力学震源インバージョン手法がいくつか考案されている. ところが,全てのパラメタは独立に推定できないこと,「分かること・分からな いこと」があることが知られてきている.本発表では,インバージョン手法の概 要についてと動的パラメタのトレードオフ関係について,またインバージョン手 法に関する新たな試みについても紹介する予定である.
弾性体解析の分野で、近年粒子法への注目が高まっている。粒子法とは、解析物体を粒子を用いて離散化する手法の総称である。本セミナーでは粒子法の1つであるMPS(Moving Particle Semi-implicit method)法を例題に粒子法の計算方法、粒子法の利点、現在できること、これからやるべきことを紹介する。本セミナーでは、粒子法を俯瞰しMPSでどのような計算が可能であるのかを紹介することに重点を置く。計算機を専門としない方にも十分理解できるセミナーにする予定である。MPS法の詳しいアルゴリズムや計算テクニックなどは詳細な配布資料にて補足する。
The seismotectonic setting of the Philippine island arc terrane is attributed to activity of surrounding convergent zones. Active tectonics in the archipelago is significantly controlled by subduction processes along the east-dipping Manila trench and west-dipping Philippine trench to the west and east, respectively. However, the earthquake and tsunami hazard potential of these tectonic features has yet to be constrained.
Fieldwork was carried out along the coasts of western Pangasinan (Luzon Island) and eastern Davao Oriental (Mindanao Island) to search for paleoseismological evidence relating to past megathrust earthquakes along the Manila and Philippine trenches. Uplifted coral reef terraces showing several steps were observed and measured. In both localities, the lowermost terrace is usually overlain by sand, while the upper steps are mostly erosional. Marine notches are also noted at the inner margin of the terraces. The staircase characteristics of the terraces, as well as the meter-range height separation of each step strongly suggest a series of large pre-historic tectonic events in the area.
Radiocarbon dating of fossil corals sampled from emerged terraces in Pangasinan and Davao Oriental hopes to constrain the timing of seismic events along the Manila and Philippine trenches. Available earthquake data show very few large earthquakes generated from these subduction zones in the past 400 years. Results from this study hope to highlight the potential for both large megathrust and tsunamigenic earthquakes from this remote area in the west Pacific.
力学的側面から考えると、地震の震源は地中の既存不連続面のすべり、と解釈できる。本発表の冒頭にて、まずそのことを直観的に示す。
このすべり運動は、不連続面におけるすべり抵抗を規定する物理プロセス、および不連続面周囲の弾性体(より一般的には粘弾性体)の運動方程式に拘束されると考えられる。このような考えの下、地震の震源動力学モデル、と称される力学モデルが多数提唱されてきた。本発表の中盤においては、それら過去のモデルのいくつかを紹介し、その延長上にある、発表者の研究の位置づけを明確にする。
肝心の不連続面におけるすべり抵抗を規定する物理プロセスは、甚だ複雑であると考えられている。そのうち、いくつかのものを抽出する形で、現在のところ最も良くまとまっているのが、速度・状態依存摩擦則と言われるものである。これを用いた研究の一例として、発表者による、バリアに囲まれた均質なすべり面における震源核生成の研究を紹介する。具体的には、通常の「地震現象」よりもはるかに低速で断層がすべる「ゆっくりすべりイベント」が、はたしてその始まりから「地震現象」と異なる特別なものであるかどうか、について、1つの側面から考えることになる。
火山噴火が爆発的になるか・非爆発になるかをを議論する上で,マグマ中の揮発性物質が,どこからどの程度マグマ本体から抜け出ている(脱ガスしている)かを考えることは重要である.マグマの脱ガスの経路としては,次の2つが現在議論の対象となっている;(1)火口や噴気孔を直接通って大気中に放出される(ここでは「火口・噴気孔」と呼称する)(2)火道から山体内部へ向かって拡散的に広がり,土壌を通って大気中に放出されたり,帯水層中の水に溶け込んで,地下水流動により山体外部へ輸送される(ここでは「山体散逸」と呼称する).従来では,「火口・噴気孔」がマグマの脱ガスのメインな経路であると考えられてきた.しかしながら,最近になって「山体散逸」量が「火口・噴気孔」からの火山ガス放出量に匹敵,あるいはそれをはるかにしのぐ可能性が地球化学的研究から示唆され,マグマの脱ガス経路としての「山体散逸」の重要性が認識され始めた.こうした火山ガスの散逸に関する研究は,地球化学的手法が得意とする分野であり,他の手法を用いた研究は全くない.私は,マグマの脱ガス経路の本質が「山体散逸」にあるとの立場に立ち,火山ガス成分が水に溶解することで電気伝導度が非常に大きくなることを利用し,「電磁気学的手法」により火山体の帯水層の電気伝導度の空間分布を調査し,数値モデリングを通して火山ガスの「山体散逸」量と帯水層の電気伝導度の空間分布との定量的関係を明らかにすることを目的として研究を進めている.現在,構築された帯水層を通した火山ガスの輸送モデル(あくまで初歩的な単純化モデルであり,稚拙で現実性に欠けるため今後改良が必要だが)から,観測で得られた帯水層の電気伝導度の空間分布を定量的に説明することを試みている.
地球自由振動とは、大地震発生から数日にわたり、地球が複数の固有周波数を持って振動し続ける現象で、大地震後の重力やひずみの観測記録をスペクトル解析することで確認できる。観測された地球自由振動の固有周波数と減衰定数には、地球内部の密度分布や地震波速度分布などの情報が含まれており、地球内部構造の推定に用いられている。本発表では、地球自由振動に関するいくつかの研究例を挙げ、そこから得られる情報について紹介を行う。
沈み込み帯の構造発達において,力学的プロセスと熱的プロセスの相互作用は重要である.海洋プレートの沈み込みは,弾性的リソスフェアを変形させると同時に,粘弾性的アセノスフェアに流れ場を形成する.結果,移流による温度構造の変化が生じ,物性構造が改変される.このような構造発達過程をシミュレートするため,プレート沈み込みに伴う内部変形速度場を計算する力学的FEMモデル,熱の拡散と移流による温度変化を計算する熱的FEMモデルを開発し,両者をカップルした数値モデルを構築した.本セミナーでは,モデリングの詳細とシミュレーションの結果を紹介する.